勉強してもテストで点数が取れない子(その3)(2011/09/25)

前回の続きで、勉強の質の高め方についてです。

学校の問題集や塾のプリントでは正解できるのに、テストになると点数が取れないというご相談がときどきあります。こういう場合、もっと多くのパターン演習をすれば得点できると考えて、「もっと問題を解きなさい」「もっと勉強しなさい」とお子さんに言ってしまいがちです。お子さんも問題演習の量を増やして頑張ります。でも、結果に結びつかず、だんだんとやる気を失っていくことが多いようです。

こういうケースでは、「もっと勉強しなさい」とお子さんに言う前に、お子さんが機械的に問題を解いていないかを確認してあげてください。問題を機械的に解いているお子さんは、問題の表現を変えられるだけで、たちまち解けなくなります。

たとえば、

1 時速50kmの車が、3時間走ると何km進むか?

2 1時間に50km進む車が、3時間走ると何km進むか?

1と2は同じ問題なのですが、「は・じ・き」の公式に数字を機械的にあてはめて答えを出しているお子さんは、1の問題は解けますが2の問題は解けません。2の問題では、「速さ」が問題文に書いてありません。「は・じ・き」の公式に機械的に数字をあてはめている子は 手も足も出ないのです。

入試や定期テストでは、1のように出題するとほとんどのお子さんが正解してしまうので、2のように問題の問い方を変えて出題されます。また、本質的な理解ができているかどうか確かめることもできますから、2のような問題のほうが好まれます。そうすると、機械的に問題を解いているお子さんは、問題集では解けたのに、テストでは得点できなくなります。

こういう場合に有効なのは、どうして「は・じ・き」の関係が公式のようになるのか、具体的にイメージしながら問題を解くようにすることです。 先ほどの問題だったら、「時速50km」は「1時間に50km進む速さ」だと、お子さんが具体的にイメージできるようにしなくてはいけません。絵を書く、線分図を書く、表を書くなどして、お子さんが「時速50km」という言葉の意味を具体的にイメージできるように教えることが大切です。

高校になると、数学の問題の抽象度は格段に上がるので、なかなか具体化するのは大変ですが、それでもできるだけ具体的に考えようとすることが大切だと思います。たとえば、直線の通過領域を求めるときに、どうして実数解の存在条件を考えるのかを具体的にイメージできていれば、解法を忘れにくくなりますし、応用問題にも対応できるようになります。

社会のような暗記科目も同様です。以前は、社会は「覚えれば得点できる」科目でした。ところが、指導要領の改訂で、思考力・判断力が重視されるようになり、入試や定期テストでも「覚えれば得点できる」問題は減ってきています。逆に、与えられた資料を読み取って考える問題や、複数の出来事の間の因果関係を考える問題が増えました。これらの問題には、用語を丸暗記しているだけでは対応できません。 用語の意味や出来事のつながりを具体的にイメージしながら知識を覚えておくことが大切です。

私は、「読める」と「わかる」は違う、と教え子たちによく言っています。「衆議院議員選挙の選挙方法は?」と質問すると、「小選挙区比例代表並立制」と答えますが、「どのような選挙制度か?」と聞くとまったく説明できない、なんてことがよくあります。「用語が読める(言える)」のと「用語の意味がわかる」のは違います。ところが、多くのお子さんが「読めればわかった」「言えればわかった」と考えています。 用語を機械的にひたすら覚えて、一問一答形式の問題をたくさん解いたら、 テストでも得点できると思っている子もいます。もちろん、それで得点できる問題もありますが、 思考力・判断力を問う問題には手も足も出ません。

お子さんがこういう状況でしたら、一つ一つの公式や用語の意味を 押さえながら、具体的なイメージを持たせてあげてください。ただ、一朝一夕にはできるようになりません。特に、お子さんが機械的に勉強してきた期間が長いと、機械的な解き方をする習慣(クセ)が体に染み付いてしまっていますから、意味を考えて勉強するようになるまで相当の時間がかかります。根気よく取り組むことが必要です。

このページの先頭へ