お子さんの解き方に合わせる(2015/12/11)

期末テストの前半戦が終わりました。 まだ数名のお子さんが期末テストの真っ最中です。 これから後半戦です。 前半組のお子さんは結果がすでに出ていますが、 なかなか良い結果だったと思います。 良いお正月が迎えられそうでほっとしています。

中3の女の子は数学でランク10をもらいました。 宿題に毎回取り組んでくれる頑張り屋です。 もともと数学が苦手なお子さんで、 当初は「(数学で)平均点を超えた!」と喜んでいたような 記憶がありますが、今では数学の成績が一番良いです。 彼女の場合は早い段階(中1の11月)でご依頼を頂けたので 計画的に勉強を進めることができたのが功を奏したのかなと思っています。 実は中2の3月まで 彼女と一緒に応用問題をほとんど解いていないのですよね。 3年生になるまでに計算問題、教科書の例題を 確実に得点できるように基礎を固めました。 万が一、応用問題が解けるようにならなくても、 数学で足を引っ張らないようにはしようと。 彼女の偉いところは検算をきちんとすることです。 今では計算ミスを滅多にしません。 それで、3年生になってから応用問題に取り組んだのですが、 解法暗記にならないように、まず問題を解いてもらって、 鉛筆が止まったらヒントを与えて、また取り組んでもらうことを繰り返しました。 応用問題の解法を与えるのではなくて、 白紙の状態で解いてもらって、彼女の解き方に合わせながら、 足りないところを補っていくという感じですね。 特に暗記が得意なお子さんの場合、理解する前に問題の解き方を覚えてしまう傾向があります。 もちろん解法暗記も大切ですが、理解せずに丸暗記してしまうと応用が効きません。

「お子さんの解き方に合わせながら」というのは、 成績を伸ばす上で大切な要素なのではないかと思っています。 解き方がわかならいとすぐにあきらめてしまう子の場合には なかなか難しいのですが、 わからないなりに考えてくれる子の場合は、 うまく力を引き出せる方法だと思います。 以前にここでご紹介したお子さんも、 (数学が赤点の状態から教え始めて、 半年後の通知表は5になった高校生です)、 基本的な公式の使い方だけを教えて、 応用問題はその場で考えてもらいました。 よく考えてくれるお子さんで、 私が解き方を教えようとすると、 「ちょっと待ってください。もう少し考えてみます!」と 彼はよく言っていました。 今教えている私立中1のお子さんも同じような感じです。 彼からも「もう少し考えます」という言葉をよく聞きます。 先日の数学のテストは平均点以上だったと答案を見せてくれました。 1つは80点台でした。 医学部に何十人も進学する学校でこの成績ですから立派ですよね。 まだまだ成績が伸びそうな予感がするお子さんです。

お子さんの考え方にはそれぞれクセがあります。 間違えた問題を時間を解いて解きなすと まただいたい同じ箇所で間違えるものです。 以前と同じように考えてしまうからですね。 それで、解答を見て、 解答の解き方に自分の考え方を合わせようと、 ときには力ずくで自分の考え方を曲げようとします。 そうすると、どこかで無理が生じます。 お子さんの解き方があさっての方向を向いている場合は別として、 お子さんの解き方でも答えを導ける場合には、 お子さんの考え方に合わせて足りない部分を 補っていったほうが「素直」だと私は思います。 服を0の状態から作ると時間がかかります。 あらかじめ持っている服に手直しをしたほうが早いです。 既製服だと自分の体に合わず違和感がありますが、 自分の体形に合った服なら着心地も良いでしょう。

英語でも同様のことが言えます。 単語はある程度覚えたのに英文が読めずに困っている、 というご相談をときどき受けますが、 問題集の和訳に頼って自分の力で訳す訓練をしていないのが 原因であることが多いです。 特に暗記が得意なお子さんの場合は、和訳を覚えてしまうので、 英文が読めるようになったと勘違いしてしまうことがよくあります。 それで、いざ未知の英文を読もうとすると読めない、読み間違えてしまう。 もちろん、英文を何度も読んで覚えることは大切ですが、 最初は解答の和訳を見ずに自分の手で和訳することが大切です。

この地域の高校では、 速読英単語(高校生の間では速単と呼ばれています)という単語集を使っている学校が多いです。 速単はよい単語集だと思いますが、 英文の右に和訳が書かれているので、 すぐに和訳を見てしまうお子さんには向きません。 例えば、必修編のp364に「 Roughly two-thirds of fly's entire nervous system is devoted to processing visual images.」とあって、 右ページには「ハエの全神経系統のおおよそ3分の2は、視覚映像を処理することに充てられる。」と和訳が書いてあります。 そうすると、右のページの和訳を見て、 「devoted」は「充てる」という意味だと覚えてしまうわけです。 でも、devoteを辞書で引くと『捧げる」という意味が 最初に書いてあります。それが中心的な意味だからです。 もちろん「充てる」という意味もありますが、 単語はコアの意味を覚えたほうが応用が効きます。 (速単の単語解説のページには「捧げる」いう意味がきちんと書いてありますが、 ほとんどの子は単語のページは見ません。)

速単を学校で使っているお子さん(高2の女の子です)を今も教えていますが、 単語のページだけを覚えて、 和訳は絶対に見ないという約束をしています。 長文はできるだけ授業中に一緒に訳すようにしています。 先日、ちょうど速単の上記のページが期末テスト範囲だったので 一緒に和訳しました。 先ほどの「 is devoted to processing visual images」の箇所で、 彼女は「視覚のイメージを処理することに捧げられる」と訳して、 「ん?捧げられるってことは、処理することだけに使われるってことですか?」と言いながら 和訳していました。 この経験が未知の長文を読むときには大切なのですよね。 きっと彼女は「devote his life」とか「devote his energies」が英文中に出てきても和訳できるでしょう。 他人の和訳を見て覚えても英文を読む力はつきません。 自分の力で和訳し意味を考えることが何より大切です。 読む力は一朝一夕にはつきませんから、早い段階から取り組んでおく必要があります。 センター試験の英文は簡単なので適当に訳しても何とかなりますが、 2次試験の英文は内容が難しいですから。

ただ、こうやって地道に和訳する練習をしなくても、 たくさんの長文を読むだけで 自然と未知の長文を読めるようになる子はいます。 数学でも同様で、シャワーのように問題を解くだけで 問題が解けるようになる子もいます。 他人の勉強法をマネても成績が伸びないことがあるのは当然で、 お子さんによって解き方は違うし能力だって違います。 あるお子さんにたまたまうまくいったからといって、 同じ教え方をしてほかの子も伸びるとは限りません。 「お子さんの解き方に合わせる」、「お子さんの能力に合わせる」、 これが教える際に難しいところであり、面白いところでもあると思います。

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