1ページを10回繰り返す(2011/06/19)

「10ページを1回勉強するより、1ページを10回勉強したほうがよい」と私は思っています。現実には、1ページを10回繰り返すというのは時間的に難しいでしょうが、そのぐらいの精神で取り組まないと、身に付くものも身に付きません。

言うだけでは伝わらないので、私は授業中に実践することが大切だと思っていて、お子さんたちには、教科書や問題集を繰り返し読んでもらっています。中学生は、私の授業だけで英語の教科書を5回以上は読んでいると思います。音読の宿題を出していますから、その分を合わせると10回以上は読んでいるでしょう。これだけ読むと、英文を覚えようとしなくても、自然と頭に入ってしまうようです。高校になると、英文も長くなりますから、授業中に英文を読む回数は減りますが (それでも3回は読んでいると思います)、100個前後の英単語を毎回の授業でテストをしながら読んでもらっています。

ただ繰り返せば良いというわけでなくて、精読を心がけることが大切です。社会や理科の問題集を解くときは、最初の2、3回は問題文を一字一句飛ばさずに音読してもらいます。一つ一つ丁寧に音読するのは、読むほうも聞くほうも忍耐が必要ですが、「問題文を丁寧に読みなさい」と言うよりは、はるかに効果的です。多読や速読も、忙しい世の中ですから、時には必要だと思いますが、 しっかりと文章を読まないといけない場面で、集中力を高めて最後までしっかりと文を読み切る、 精読の精神力も養っておかないといけないと思います。 現代文の難しい文章でも、わからない言葉の意味を一つ一つ確かめながら、何回も読み込んでいくと、知識や思考力が自然と身に付いてきます。読書百遍意自ずから通ず、ですね。

「1ページ10回」の話をすると「そんな勉強をしていたら、最後まで終わらないよ。」 と、不満を言うお子さんがときどきいます。そんなことを考えているから、彼らはテストで良い点数が取れないのですね。 いかに楽をして効率的に点数を上げるかばかり考えていると、彼らのような発想になってしまうのでしょう。勉強時間に勉強のやり方を合わせるのではなくて、勉強のやり方に勉強時間を合わせるべきなのに。

点数至上主義で、子供に効率的・合理的な勉強を強いる、まわりの大人の責任もあると思います。問題集やプリントで、テストに出そうなところをとにかく大量に解かせる、子供に十分に考えさせる前に解き方を教えてしまう等々。たくさんの問題集やプリントを「ただ」解くだけで、できるようになるほど、勉強は単純で楽なものではないと思います。こういう勉強(勉強というより作業に近い)を続けていると、 気が付いた時には、「勉強をしたのに点数が取れない」という状態になってしまうこと があります。この状態に陥ると、抜け出るのは相当に大変です。

「学問に王道なし」というユークリッドの有名な言葉の通りで、一つ一つ時間をかけてきちんと積み上げていかないと、学力は身に付きません。地道にひたすら繰り返すことが、結果的に「近道」になると思っています。

このページの先頭へ