どの時期に、何を、どこまで勉強するか(2012/05/29)

先月からプリント作成に追われていましたが、少し落ち着きました。 ほとんどのお子さんの中間テストも終わりました。中学で新指導要領が実施されてどこまでテスト範囲が広がるのかな、と思っていましたが、例年通りのテスト範囲に落ち着いています。どこかでペースをあげるのでしょうけどね。ただ、発展的な内容(従来は高校範囲)の取扱いは、すでに学校の先生によってかなり違っています。高度な内容をテストに出題しているところもあれば、従来通りの内容しか出題していない学校もあります。

今回は受験勉強のペース配分について書きたいと思います。一夜漬けでもどうにかなる定期テストとは違って受験は長丁場ですから、どの時期に、何を、どこまで勉強するのか、が大切です。これを伝えるのも私の役割だと思っています。個別指導の強みですね。

たとえば、英文法で「it is ~ of A to do のパターンで用いられる形容詞」という 項目があって、覚えるべき形容詞が10個ぐらい参考書には載っています。こういうのを見ると、すぐに覚えようとするお子さんがいますが、 今の5月の段階で覚えても、大学入試の時には忘れてしまいます。だから、「今はこれを覚えなくてもいいよ」と私は言っています。じゃあ、まったく覚えなくても良いのかというとそうではなくて、これらの形容詞は「人を主語にできない形容詞だ」と大雑把に覚えておくのがコツです。大雑把というと手を抜いているように思われるかもしれませんが、 大雑把だからこそ正確に覚えておくことができるのですね。 一つ一つの知識を一気に詰め込むと、どうしても情報が不正確になります。大雑把に正確に覚えるのがコツです。 これが定期テストのための勉強と入試のための勉強の大きな違いです。 大雑把に知識を入れておいて、復習するたびに10個の形容詞に目を通す、こうやって繰り返すうちに必要な知識の大半はちゃんと頭に入っているものです。これも大雑把だからこそ繰り返すことができるのですね。

世界史でもそうですね。今年は、久しぶりに受験で世界史選択のお子さんがいて、楽しく授業をさせてもらっています。世界史は覚えることが本当に膨大なので倦厭されがちですが、だからこそ、得意にしてしまえば安定して高得点が狙える科目なのでおすすめです。世界史の場合は、王朝や皇帝(王)の名前を軸にして、まずは歴史の流れを正確に覚えます。

古代ギリシアだったら「クレタ文明をアカイア人が破壊して、 そのアカイア人がミケーネ文明を担った。そのあと、文字記録のない暗黒時代に入り、 ポリスが形成された。代表的なポリスはアテネとスパルタで、アテネでは貴族政治が行われたが、平民による参政権の要求が高まり、ドラコン、ソロン、ペイシストラトス、クレイステネス、ペリクレスの順番で民主化が進められる。 ペルシア戦争での無産市民の活躍により、ペリクレスのもとで民主政治が完成した。ペルシア戦争後はアテネが覇権を握ったが、その後、スパルタ、テーベと覇権が移り、長年の抗争によりポリスが衰退した結果、マケドニアに支配されることになった。」

地図を思い浮かべながら、歴史の流れを大雑把に正確に言えるようになることが大切です。 そのあとでサブノートや用語集を何回も読み込んでいけば、細かい用語は自然と頭に入っていきます。これを最初からミルティアデスとか、 エパメイノンダスとか、細かい用語を覚えようとしても 頭に入りませんし、これらの用語をずっと正確に覚えていられるほど、人間の頭は良くできていないと私は思います。少なくとも私の場合はそうですね。なにしろ受験生は覚えておくことがほかにも山ほどあります。英単語、英熟語、語法、古単語、句法、現代文用語、和積の公式、有機化合物の名称などなど。

「覚えても忘れてしまう」と悩んでいるお子さんが時々いるのですが、細かい事柄をいつでも正確に引き出せる必要はないのですね。普段は7~8割の基本知識を引き出せれば十分です。ただし、この7~8割の基本知識は徹底的に正確な知識でなければなりません。細かい知識は忘れてしまっても入試直前にざっと復習をすれば思い出せる(と自分で感じる)あたり、 普段の勉強ではそのレベルを目指して取り組むと方向を見誤ることはないと思います。入試では、10の不正確な知識より1の正確な知識のほうが役に立ちます。多くの受験生は入試間近になって(赤本を解き始める頃でしょうか)、このことに気付きます。

受験は限られた時間の中での競争です。 受験生は入試までにかなりのことができそうな幻想を抱く傾向があるのですが、 実はそれほど多くのことはできないのですね。 ですから、入試から逆算をして、どの時期に、何を、どこまで勉強するのかがとても大切だと思います。

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